古地図散歩するなら萩で!町あるきツアーに参加してみた

美しい古地図が豊富に残されている山口県。古地図を眺めながら地元ガイドの案内で城下町や宿場町を歩くガイドツアーが県内各地で開催され、新たな旅の楽しみとして注目されています。今回は数ある古地図ツアーのなかから、城下町の面影を色濃く残す萩市の「堀内コース」に参加!実際に歩いて、その魅力をお伝えします。

古地図散歩するなら萩で!町あるきツアーに参加してみた

そもそも、古地図散歩の魅力とは?

江戸時代に作られた古地図。それを片手に散策する魅力とは、町に刻まれた歴史の痕跡を発見する楽しさにあります。古地図からは当時の地形や人々の暮らしぶりを伺い知ることができ、現在の町並みと見比べながら歩くことで、「ここには昔〇〇があったのか」「だからこの地名は〇〇なんだ」といった新たな気付きと出会えます。何度も訪れた地域でも、古地図を片手に散策することで新しい魅力を再発見できる。それが古地図散歩の奥深さなのです。

城下町、萩は絶好の古地図散策スポット

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長州藩の絵図方(絵図づくりを担う専門部署)が作成した古地図が多く残る山口県。なかでも萩は、今でも古地図を使って町歩きができるほど、当時の町割りが広範囲にわたり残る全国でも稀な地域です。その理由のひとつに、禄を失った武士・士族の経済救済のため明治時代に始まった夏みかん栽培が挙げられます。長く、高値で取引された夏みかん。その園地として活用されたのが、役目を終えた武家屋敷でした。夏みかんの栽培は昭和30年代まで盛んだっため、近代化に伴う開発の波を防ぐことにつながったのです。ほかにも、鉄道が城下町を迂回するように開通したこと、戦災や火災など大きな災害を免れたことも重なって、当時の町割りが今も残っているのです。

世界遺産にも登録された萩城下町の「堀内コース」をガイドさんと一緒に歩いてみた!

世界遺産の構成資産にも登録された萩城下町は、「城跡」「旧上級武家地」「旧町人地」と3つの区域に分類されます。今回参加したのは、旧上級武家地を約2時間かけてめぐる「堀内コース」。ここは萩城・三の丸にあたり、萩藩主・毛利一門や永代家老などの上級武士の屋敷跡が並ぶエリアです。現在は「堀内地区」と呼ばれ、伝統的建造物群保存地区にも選定されている歴史的に価値の高いエリアとなっています。


ツアーの集合場所は、堀内地区に建つ「萩博物館」。毛利一門のひとつ、大野毛利家の屋敷跡に建ち、武家屋敷にならって隅矢倉や長屋門が復元されています。館内では、萩の歴史や文化、自然などを紹介。出発前に見学することで、古地図ツアーの理解の深まりに一役買いますよ。

萩城下町のメインストリート「本町(ほんちょう)」を散策

ガイドさんから配布される古地図リーフレットを片手に持ったら、いよいよツアーのスタートです。まず散策するのは、萩博物館前の本町の通りから。ここは、萩城三の丸(旧上級武家地)のメインストリートであり、江戸時代にはお殿様が参勤交代のため通った御成道だった場所。一直線にのびる道は壮観です。かつての道幅は今の約2倍もあったそうで、広すぎる道を畑に変え、現在の道幅に狭まったといいます。「江戸時代の道幅を示す痕跡があるのですが、分かりますか?」とガイドさん。よく見ると、石の積み方が異なる塀を発見。謎解き感覚で楽しめるのも魅力のひとつです。

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筋名にも注目しよう

三角州を開墾し、城下町を築いた萩。そのため計画的に都市を作ることができ、均整のとれた縦横の筋(道のこと)が配置されています。それぞれの筋には職業や伝承など地域に根差した名前が付けられ、その数なんと約250! かつての筋が分かるよう、萩城下・御成道エリアの道路には筋名が書かれた道標が埋め込まれています。

筋名にも注目しよう

当時の町割りを伝える石垣や土塀に注目

  • 萩市観光協会

通りを進むと、ひときわ長い土塀に目を奪われます。ここは永代家老益田家の分家筋にあたる問田益田氏の旧宅で、その白壁の土塀は「問田益田氏旧宅土塀」と呼ばれ、萩の名所のひとつになっています。全長231.7mにわたり、市内に現存する土塀の中では最長。古地図と実際の風景を見比べると、当時の屋敷の大きさに改めて驚かされます。町割りを物語る土塀や石垣に注目しながら、さらに道を進みます。

口羽家住宅を見学したら、萩を代表する景観「堀内鍵曲(かいまがり)」へ

通りに点在する歴史的な建物観賞も古地図ツアーの醍醐味です。現在も子孫が住む「口羽家住宅」もそのひとつ。表門は江戸時代中期に建てられたもので、萩に現存する門では最大規模。開館日であれば内部の見学も可能です。

さらに道を進むと、江戸時代にタイムスリップしたような風情ある道が現れます。ここは「堀内鍵曲」と呼ばれる通りです。「鍵曲とは鍵状に折れ曲がった道のことで、あえて見通しを悪くした城下に特有の街路です」とガイドさん。古地図にもしっかりと鍵状の道が刻まれ、当時と変わらない町割りなのだということを改めて実感します。土壁からのぞく夏みかんも風情満点。萩を代表する風景として愛されています。

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夏みかんはいつ見られる?

秋には実が色づき始め、そのまま冬を越し翌年の初夏に食べごろを迎える夏みかん。そのため、ほかの柑橘に比べて長く実がなり、萩の町並みに彩りを添えてくれます。5月上旬~中旬にかけては、夏みかんの白い可憐な花が咲くシーズン。通りを甘く爽やかな香りが包み込みます。

夏みかんはいつ見られる?

ツアーの最後に萩博物館で夏みかんソフトをパクリ

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なまこ壁が美しい「旧児玉家長屋門」を進んだ先に、小さな石橋「平安橋」が現れます。城内と城下を隔てる外堀上に架かる橋で、かつては城内へ入る通路のひとつとして利用されていました。古地図にもその様子がしっかり。今回散策した場所が江戸時代には庶民が入ることができない特別な地域だったということに思いを馳せつつ、ゴールである萩博物館を目指します。ツアー特典の夏みかんソフトクリームでひと息ついたら、約2時間の古地図ツアーの終了です。


歩くほどに新しい発見と出会えた今回の古地図ツアー。ガイドさんの説明があることで、より理解が深まりました。山口県には古地図を活用したガイドツアーがほかにもたくさん!新しい楽しみを求めて古地図めぐりにでかけてみませんか。

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ガイドツアー「古地図を片手にまちを歩こう。」

山口県では古地図散策を気軽に楽しんでもらおうと、現地ガイドによるツアーを開催しています。2023年度は新たに4コースが仲間入りし、全38コースで古地図のまち歩きをお楽しみいただけます。2024年3月までスタンプラリーも開催中!

ガイドツアー「古地図を片手にまちを歩こう。」

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