今年の夏は「山口祇園祭」を見に行こう。ニューヨークタイムズ 2024年に行くべき52ヶ所で大注目!

毎年7月20日~27日まで開催される山口市の「山口祇園祭」。2024年1月、アメリカの The New York Times(ニューヨーク・タイムズ)が発表した「52 Places to Go in 2024(2024年に行くべき52カ所)」で日本からは唯一「山口市」が選出された際の記事にもこのお祭りに関する記述があり、県内外、そして国内外からもこれまで以上に注目を集めています。
今回は山口祇園祭に関わる様々な方々の想いと共に、歴史や見どころを紹介していきます。
池田モト
池田モト
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今年の夏は「山口祇園祭」を見に行こう。ニューヨークタイムズ 2024年に行くべき52ヶ所で大注目!

山口祇園祭とは?


約600年続いている伝統あるお祭り、山口祇園祭。

山口市の夏の風物詩でもあり、県の無形民俗文化財に指定され、地元の方々が大切に守ってきたお祭りです。


2024年1月、アメリカの The New York Times(ニューヨーク・タイムズ)が発表した「52 Places to Go in 2024(2024年に行くべき52カ所)」で「山口市」が紹介された記事の中でも、京都の祇園祭に比べ小規模だが、歴史的には劣らないお祭りと評されています。 



さらに、今年5月にはアメリカ・ニューヨークで行われた「ジャパンパレード」に山口市が参加し、山口市長と共に山口祇園囃子保存会のメンバーなどが山車に乗り、山口祇園祭で行われる「祇園囃子(ぎおんばやし)」を披露しました。

今年の山口祇園祭はこれまで以上に国内外から注目を集めているのです。



山口祇園祭の始まりは、室町時代までさかのぼります。

山口を本拠地としていた守護大名・大内弘世が山口で京都を模した街づくりを進める中で、1369年に京都の祇園社(現在の八坂神社)を山口市の竪小路に勧請。

その後、京都の祇園祭を取り入れた祭礼を行ったことから始まったとされています。


毎年7月20日から始まり、初日は八坂神社で鷺の舞が奉納された後、祇園囃子や御神輿が御旅所まで練り歩きます。中日である24日には市民総踊りが、27日の最終日には御旅所から八坂神社へ神様をお返しする御還幸が行われます。 


【開催期間】毎年7月20日~7月27日

【開催場所】八坂神社、大殿竪小路、山口市中心商店街 


山口祇園祭の中心「八坂神社」

山口祇園祭の中心となるのが山口市の「八坂神社」。朱色の大きな鳥居が存在感を放っています。

楼門には「祇園」の文字があり、元々の社号は長く「祇園社」でしたが、明治時代に「神仏判然令」を受け、今の「八坂神社」という名前になったそうです。 



楼門の奥にある朱色のご本殿は三間社流造りで屋根は桧皮葺き、国の重要文化財に指定されています。 


広い境内は、山口祇園祭の期間中は多くの人で賑わうそう。



山口祇園祭の鷺の舞で使用される「扇の舞台」がありました。


八坂神社 宮司の小方礼次さんにお話を伺いました。

小方さん自身も幼い頃から祭りに参加しており、「7月20日が初日の山口祇園祭は、ちょうど夏休みの始まりとも同じ時期だったので、お祭りで夏が来たことを感じていた」とおっしゃっていました。 


山口市民にとって夏の訪れを感じさせる山口祇園祭。

近年のコロナ禍では総踊り等一部は中止にせざるを得なかったものの、御神輿をトラックで運搬するなどの工夫をし、規模を縮小して伝統を繋いできました。


「地域の人たちの意地であり、次の世代へ引き継いでいかないとという使命感だった。そして山口祇園祭には疫病退散の意味があるので、『今こそ必要とされている、今だからこそ行うんだ』との思いだった」



2023年、コロナ禍を経て4年ぶりに例年通りの規模での開催。

「見物に来られた方の中には涙を流している方や、御神輿に手を合わせる方もおり、街の人々の祭りに対する思いや期待を改めて感じた。街の方々のためにも地域を元気にするお祭りでありたい」と小方さん。


今年はニューヨークタイムズで山口市が取り上げられ、これまで以上の注目を集める山口祇園祭について、「御神輿を担ぐ方々などは、いつもより注目が集まっていることにやはり期待もしているし、全体として士気も高まっている。でも、だからといって特別なことをするわけではなく、今まで続けてきたことをしっかりと継承していくだけ」とのこと。 



山口に住む方々の中にも山口祇園祭を知らない方々もいるそうで、「山口にもこんな立派なものがあるぞと知ってほしいし、旅行者の方々だけではなく山口県内、地元の方々にこそ見に来てほしい。そして見に来て興味を持ったら、また来年参加してほしい。地域の皆さんの一体感が現れる象徴でもあるし、お祭りをきっかけに山口の皆さんの交流が深まれば」と話していました。 

途切れることなく続いてきた600年以上の歴史「鷺(さぎ)の舞」

(写真:山口県立大学 講師 藏田典子さん提供)


山口祇園祭の初日に奉納される「鷺の舞」は、県の無形文化財に指定されています。

演者は雌雄の鷺2羽、カンコと呼ばれる鼓を持つ少年2人、シャグマ(猟師)2人の計6人。

舞の内容は「庭をゆっくりと舞う二羽の鷺を、猟師のシャグマが射とうと身構える。これを知ったカンコの少年が小鼓をたたいて鷺に危険を知らせ、猟師の邪魔をして鷺を助ける」というもの。

全体を通して2分程度のコンパクトなもので、衣装も華美な装飾はなく非常にシンプルです。 

鷺の舞は黒地蔵のある万福寺で初舞をし出発したのち、街を練り歩きながら八坂神社へと向かい、御神輿3体の前で舞った後、御旅所へ奉納されます。



鷺の舞について、鷺の舞保存会 会長の藏田妙子さんとその娘さんである山口県立大学の講師の藏田典子さんにお話を伺いました。 


古くから鷺の舞を取り仕切る「頭屋」(世襲制)は4戸あり、4年に1度「鷺頭人」となり神事に奉仕。

藏田さんの家も200年以上代々頭屋を務めてきた家の1つ(岡村家)で、昔から続く世襲制で頭屋を務めているのは今では藏田さんの家のみとなっています。



藏田妙子さん、典子さんは「山口祇園祭は一大イベントであり、幼い頃から7月20日は特別で、それでいて『あたりまえ』にあるもの。」と言います。 



鷺の舞は山口だけでなく、京都の八坂神社や島根県津和野町の弥栄神社にもありますが、いずれも途中で中断して再興したという歴史があり、途切れることなく600年以上続いてきたのは山口の鷺の舞だけだそう。

地域の方々や「頭屋」の使命感や責任感によって受け継がれてきました。 

(写真:万福寺に保管されている過去に使用していた道具や衣装たち)


長い歴史を繋いできた鷺の舞ですが、引き継いでいくには課題も多くあります。 

「関わる方々の高齢化や人手不足のほか、和紙を貼っている鷺の頭や、木でできた羽など専用の衣装の買い替えや作りかえにはやはりお金がかかる。衣装や道具などをこれからどう整備・維持・管理していくかもこれからの課題ですね」。


様々な課題があり、頭屋の形や風習・習わしも時代に合わせ変化する中で、それでもこれまで引き継いできた伝統を途切れさせることなく次の世代へ繋いでいきます。 


「ニューヨークタイムズで山口市、そして祇園祭が取り上げられ、地元にいると分からない、当たり前にしてきたことにスポットが当たった。だからと言ってやることが変わるわけではない。10年後も20年後もやり続けるために、やるべきことをやっていきたい」と話してくださいました。 

約1500人の参加で祭りを彩る「市民総踊り」

(写真:山口市ふるさとまつり実行委員会提供)


山口祇園祭の中日に行われる「市民総踊り」は山口市の中心商店街で行われ、事前に団体や個人で申し込んだ参加者たちが「大内の殿様」という歌に合わせて踊りながら練り歩くというもの。

コロナ禍で中止となった年もありましたが、4年ぶりに開催された2023年は26団体1200人もの人々が参加。

参加者も幼稚園ぐらいの子供たちから80代まで幅広く、地元の方々から親しまれています。 



市民総踊りについて、山口市ふるさとまつり実行委員会 事務局の南和宏さんにお話を伺いました。


南さんによると「市民総踊りは山口祇園祭の神事とは異なり、市民のにぎやかしの色合いが強く、昭和38年ごろに始まった比較的歴史の浅いものです。山口で国体が行われた際に全国の人をおもてなししようと企画され、いつの頃からか山口祇園祭の中日に行われるようになった」と言います。 


近年、参加者の国際化も進んでおり、地元住民だけではなく山口に住む留学生の方の参加も。

今年はすでに申し込みが締め切られ、前年よりも多い30団体約1500人が参加予定だということです。



(写真:山口市ふるさとまつり実行委員会提供)


さらに今年はニューヨークタイムズで注目されたことに合わせ、山口市主催の観光ツアーで市民総踊りに参加できる体験プランが用意されているほか、例年より総踊りのコースも少し長くなるそう。

南さんは「注目されていることを意識していないわけではないが、浮足立たずに市民の皆さんが一番楽しんでいただける総踊りにしながら、多くの人に見に来ていただきたい。観光の方には地元の方々が大切にしてきたもの、山口市の地域性や良さ、中心商店街の雰囲気を感じてもらい、総踊りを通じて地元の方と関わるきっかけ、街での交流が生まれるきっかけになれれば」と話していました。 

街を練り歩き盛大に盛り上げる「御神輿」

(写真:山口県立大学 講師 藏田典子さん提供)


山口祇園祭の初日の「御神幸」、最終日の「御還幸」に登場する「御神輿」。

天狗の巨大なお面を先頭に、四角・六角・八角の三基のお神輿を、白いサラシに白い半パン、白足袋姿の裸坊たちが担いで街を練り歩きます。



御神輿について、山口祇園祭振興会 事務局長の俵田祐児さんにお話を伺いました。

俵田さんはお父さんに付いて中学時代はお手伝い、高校生からは御神輿の担ぎ手として参加。「この時期が来てお祭りの準備段階に入るとワクワクする!山口祇園祭は自分の人生の中で大きな支えであり、これからもずっと担ぎたい」と山口祇園祭への人一倍強い思い入れを感じました。


俵田さんによると「山口祇園祭の御神輿は昔はもっと「暴れん坊神輿」で威勢よく豪快にぶつかりあっていた。各地区が分担して山車を作り、それぞれがライバルとして競い合う形でお祭りを盛り上げていた」と言います。


コロナ禍では感染防止のため、トラックで運搬された御神輿。

「伝統をなくしてはいけないという思いと地域方々の協力、寄付、みんなの力があってコロナを乗り越えられた。4年ぶりの復活となった2023年は思いっきりやろうとみんな楽しみにしていた」と俵田さん。 

ニューヨークタイムズに取り上げられた2024年は、山口市主催のツアーで観光客の方が神輿を担ぐ体験プログラムも用意され、さらなる盛り上がりが期待されます。 

「山口の街と山口祇園祭が世界発信されることは喜ばしいし誇りに思う。だが、伝承していく中で一時的なブームにとらわれず、惑わされず、伝統を未来に繋げていきたい」と話してくださいました。 



御神輿は裸坊が担ぐ神輿の他、子ども神輿や女神輿もあります。 

「サラシ姿への抵抗などから年々御神輿を担ぎたい人は減ってきている。子ども神輿に参加した子供が大きくなって御神輿を担ぎたいと思ってもらえれば。また、御神輿が山口の中心部を練り歩き盛大に盛り上げることで経済面でも効果を発揮すると思う。生で見て京都とは違う山口の祇園祭を肌で感じてもらい、ニューヨークタイムズで注目されていることをいいきっかけとして周知していければ」。


まだ山口祇園祭の御神輿を生で見たことがないみなさんは、ぜひ現地へその迫力を体感しに来てくださいね。 

お祭りに行ってきました!

2024年7月20日、山口祇園祭初日に私も遊びに行ってきましたよ♪

18:30に八坂神社で鷺の舞が奉納される際には、地元の方々や旅行者、テレビや新聞などのメディアの方々が集まり境内は大にぎわい。

大きなカメラを持った方、さらに海外の方もいらっしゃって、山口祇園祭の注目度の高さを実感しました。


鷺の舞の奉納を見届けた後は、拝殿前で担ぎ手による大迫力の出陣式!その後19時に御神輿が八坂神社を出発しました。威勢のいい掛け声とともに大きな山車と3基の御神輿を担ぐ様子は迫力満点!駅通りにある御旅所(おたびじょ)までの約1.7kmのルートを、約2時間かけて練り歩きます。

山口駅周辺や山口市中心商店街で出店を楽しんでいると、ここでも山車や御神輿に出会うことができ、活気あふれるお祭りの雰囲気を満喫できました!


山口祇園祭は毎年同じ日にちに開催されます。ぜひ次の夏は山口においでませ 

世界が注目する山口の伝統あるお祭り、ぜひ体感しよう!

今回は山口祇園祭の見どころ、そして様々な形で参加する皆さんの思いをご紹介しました。

取材を通して、関わる皆さんの多くが「ニューヨークタイムズで注目されることを嬉しく感じながらも何かを変えるわけではなく、浮足立つわけでもなく、今まで通りこの長く続いてきた歴史を次世代へ繋いでいく」という強い思いを持っておられることを感じました。


国内外から大きな注目を集める山口祇園祭。

約600年続く長い歴史と伝統の詰まった山口祇園祭で夏の訪れを感じてくださいね。 

Column

特集『ニューヨーク・タイムズ紙「2024年に行くべき52カ所」に「山口市」が選ばれました!!』

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特集『ニューヨーク・タイムズ紙「2024年に行くべき52カ所」に「山口市」が選ばれました!!』

この記事を書いた人

池田モト

生まれ育った山口県がぶち好きなんちゃ!1児(3歳)のママ。趣味はおでかけ、特技はお出かけの情報収集。

山口県を拠点にフリーアナウンサー、取材力を活かしてライターとしても活動しています。

「もっと山口が好きになる・知りたくなる・行ってみたくなる」山口県にある数えきれない魅力を県内外に発信していきます!

池田モト