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山口県長門市の紅葉名所「大寧寺」がいよいよ見頃!長門湯本温泉や大内氏との由縁など、歴史をわかりやすく解説します!

山口県内で最も古い歴史を持つ温泉郷の一つ、『長門湯本温泉』から約1kmの山間に佇む『大寧寺』は、県内で有数の紅葉の名所として知られています。
室町時代に西国の覇者として栄華を極めた大内氏の終焉の地としても知られ、最盛期には全国に600もの末寺を持つほど繁栄し「西の高野」とも呼ばれた由緒あるお寺であり、実は『長門湯本温泉』とも深~い関係にあるのです。
そんな『大寧寺』では紅葉の見頃が始まっており、120本以上のモミジやイチョウが彩りを添え、12月中旬ごろまで赤や黄色の落ち葉の絨毯が参道を敷き詰めます。
山の中の美しい古刹で、歴史ロマンに想いを馳せながらの紅葉狩り…一足先に楽しんできました!
サキエ
サキエ
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山口県長門市の紅葉名所「大寧寺」がいよいよ見頃!長門湯本温泉や大内氏との由縁など、歴史をわかりやすく解説します!

凛とした境内を、紅葉散歩

ここ『大寧寺』は、山に囲まれたとても静かなお寺です。

駐車場で車を降りると、まず山の清らかな空気が気持ちいい…

大きく息を吸ったら、体の中に凛とした空気が巡りました。

そんな私たちを、色づき始めていた境内の木々が出迎えてくれます。


私たちが訪れた11月上旬は、まだところどころ色づいている感じでしたが、いくつかの木はすでに真っ赤に染まっており、周りの山々の深緑と相まって、紅葉とのコントラストがとても美しい  


境内には歴史の名残として様々な史跡や遺構が残っており、全体が山口県の史跡に指定されています。

「兜掛けの岩」と「姿見の池」

境内入口付近に立つ看板と、苔むした古い石塔が目をひきました。

『大寧寺』は、戦国時代(1551年)、大内氏の31代当主・大内義隆が、反乱によって追われた際に逃げ込んで亡くなった場所として知られています。

逃避行の末に境内に辿り着き、乱れた髪を整えるため、兜を脱いでこの石に掛けた…

そして隣の池に顔を映したところ水面に姿が映らなかったために自らの運命を悟り、その後大寧寺の本堂で自害した…という話が伝わっています。

その池が『姿見の池』として今も残されていました。

かしわちゃん、恐る恐る覗いてみると…


あっ。映ってる… ほっ  

旧参道から続く、「盤石橋」と「山門跡」

少し歩くと、大寧寺川に架かる見事な石橋が見えてきました。

こちらは自然石だけを組み合わせて積み上げられた『盤石橋(ばんじゃくきょう』。(1668年架橋、1764年再架橋)

この技法はドイツで1868年にゲルバーさんという人が考案した「ゲルバー橋」と呼ばれるものですが、それより104年も古い時代に同じ技術が日本にあったこと証明する文化的価値が高い橋で、「山口県三奇橋」の一つです。

今でもびくともせず残っているのが本当にすごい…!

驚きべき、昔の石工さんたちの技術の高さ!

そして実は、『長門湯本温泉』から『大寧寺』へ参拝するための旧参道がこの橋に続いています。

振り返ると、かつての「山門跡」が遺されていました。

この遺構から、相当立派な山門が想像されます。

つまり、ここがかつての正式な入口だったんですね!

当然ですが昔は車がないので、今とは違ったルートの道がありました。

多くは埋もれたり壊されたりして失われてしまう古い道ですが、『長門湯本温泉』から『大寧寺』への旧参道は今も保存されていて、歩くことができるんだそうです。

そして、その旧参道のスタート地点は、温泉街の中心に位置し、隣同士に建つ『住吉神社』と『興阿寺』。

実はここに、『長門湯本温泉』と『大寧寺』の深~い関係の秘密が!

『長門湯本温泉』との深いつながり

(写真:長門市観光コンベンション協会 提供) 


こちらが旧参道のスタート地点となる『住吉神社』(左)と、『興阿寺』(右)です。

このすぐ下に、600年の歴史を持つ立ち寄り湯『恩湯』があるのですが、この『住吉神社』で祀っている「住吉大明神」が、『恩湯』の起源にまつわる伝説に登場するのです。



   

今から約600年前の月明かりの美しい夜、大寧寺の第3世住職・定庵禅師が境内を散策していると、石の上で座禅を組む老人に出会いました。

名をたずねると、その老翁は「住吉の神」であるという。

住吉大明神はその後、定庵禅師の説法の席に通い、仏道修行に励むこととなる。

定庵禅師から修行の奥義を印可する菩薩大戒と錦の袈裟をさずけられると、住吉大明神は、「報恩に報いるため、山の後に温泉を出しておきましたのでご利用ください。」と告げ、竜の姿になって雲の上に消えて行った。

   


 

『恩湯』は、住吉大明神が大寧寺住職・定庵禅師からの恩を受けての、後世への"恩送り"だったのか…

と、考えるとなんとも素敵なお話ですね  

(写真:長門市観光コンベンション協会 提供)

   

事実、『長門湯本温泉』は「神授の湯」として『大寧寺』とはその後の歴史上、深いつながりで結ばれてきました。

昔も今も、『恩湯』の泉源の所有は『大寧寺』です。

『大寧寺』の開山堂には、袈裟を着た住吉大明神像が祀られていたり、『恩湯』では、温泉が湧き出る岩盤の上に住吉大明神像が鎮座しているのを湯舟から拝むことができます。

紅葉狩りの後は、ぜひこの伝説ゆかりのお湯、訪れてみてくださいね♪

(写真3枚目は、温泉街の「紅葉階段」。こちらでも紅葉狩りができますね!)

   

さて、こちら1枚目の写真中央の建物が『恩湯』で、その左上の木々に囲まれたあたりが『住吉神社/興阿寺』です。

そして写真上の方角が『大寧寺』方面。

この伝説の地を結ぶ旧参道を、かつての多くの湯治客や修行僧が往来していたのですね~

たくさんのお地蔵様が佇む、「お地蔵様の小道」として保全されており、看板や道しるべなどをたよりに、どなたでも歩くことができるそうです。

往復30~40分程だそうなので、今度私も歩いてみたいと思います  

「十六羅漢」と石仏様たち

紅葉と緑のコントラストを楽しみながら、さらに歩いていきます。

今はまだ掃き清められている参道も、のちに赤や黄色の落ち葉で敷き詰められるのだろうなぁ…  


さて、参道沿いにはぽつりぽつりと、たくさんの小さな石仏様たちが佇んでいます。

こちらは「お大師様」と「お地蔵様」だそうで、「お大師様」は弘法大師(空海)が開いた四国88か所巡りにちなんだ88体が、元参道と境内に設置されているとのことです。

四国は遠くてなかなか行くことは難しくても、ここで88か所の「お大師様」にお参りすることで、同じご利益が得られると考えられていたのでしょう。

たくさんの人の祈りを受け入れてきた石仏様たちの表情がとても優しかったです  

ちなみにこの石仏様たちは元々旧参道にあったものが県道新設の際に境内に移設されたもので、現在、これを再び旧参道にお戻しする計画が進んでいるとのことでした!

そして紅葉の木漏れ日を浴びてひときわ目立っていたのは「釈迦三尊」、「十六羅漢」です。




「釈迦三尊」は釈迦如来と、迦葉・阿難の二大弟子が脇侍となっている。

「十六羅漢」は、永くこの世にとどまり正法護持の任にあたる聖者をいう。




と説明板にありました。


石仏は野外の自然にさらされていることが多いので、風化して苔が付いていたり、周りの景観の中で見せてくれるそれぞれの表情や雰囲気から、"わびさび"を感じます。

大寧寺の石仏様たちも、色づいてきた紅葉に囲まれてちょっと嬉しそうに見えるのは、私だけでしょうか  

フォトジェニックな境内をさらに進むと…

境内の一番奥には『長門豊川稲荷』が祀られていました。

「稲荷」と聞くと神社を想像してしまいますが、『長門豊川稲荷』の別称は『妙厳寺』で御本尊さまは千手観音菩薩、つまりお寺なんだそうです。

"妙厳寺に祀られている叱枳尼眞天が白い狐にまたがって稲穂をかついでいる"ことから豊川稲荷と呼ばれるようになったとか。

お守りなどの販売所の方がいろいろと説明してくださいました  

紅葉のピーク時には、こちらの境内も色とりどりに包まれるそうですよ。

「毛利家重臣墓群」と「本堂」

いよいよ本堂へと向かう途中、山の手に広がる墓石群に圧倒されます。

大寧寺で自害した大内義隆のお墓のほか、日本最古の学校「足利学校」を再興した上杉憲実のお墓、そして萩藩の重臣やその家族など約300基のお墓が立ち並んでおり、墓石のカタチは五輪塔、宝篋印塔 、自然石塔、板碑型、石憧型、笠塔婆型、などなど…

日本でみられる石塔形式がほとんど集まっている、まるで石塔の博物館のよう!


さらに、『長門湯本温泉』の起源にまつわる伝説に出てきた、住吉大明神が座っていたという「安禅石」が今も遺されています。

 

たくさんの歴史の登場人物がこの大寧寺で交わり、足跡を残し、また没した人もいる…

この墓石群が壮大な歴史のロマンを物語っているかのようでした。

綺麗な鯉が泳ぐ池を渡って、本堂へ。

現在の本堂は江戸時代の1829年頃に再建されたもの。

実は山口県内の寺院本堂としてはもっとも大きな建物なんだそうで、山口県指定有形文化財として登録されています。

こちらでおみくじを引かせていただきました。

祈りを込めて…  

見頃は11月中旬から12月上旬!ライトアップも♪

壮大な歴史ロマンと、自然と人が交わって守り継がれてきた文化的景観に、終始感動し続けた時間でした。

それらに大自然が重なり…ここには、町から離れた山の中の静かな古刹ならではの、外界と隔絶されたひとつの世界がありました。

  

色づき始めていた境内の木々、これらの落葉とともに景色も足元も染まるのは、これからです!

私もまだピーク時に訪れたことがないので想像するしかないのですが、地元の方の話によると、足元まで彩られたときは、本当に信じられないくらいの美しさなんですって!!!

私、取材のため早めに行きましたが、絶対ピーク時に再訪したいと思います  

伝説の時代から変わっていないであろうせせらぎの音色を聞きながら、歴史と自然が織りなす時空に身を委ねてみてくださいね♪



Column

大寧寺の紅葉ライトアップ情報♪

毎年恒例の、大寧寺の紅葉ライトアップ!

今年は11月1日から始まっており、12月上旬までだそうです。

神秘的な絶景に、ぜひ足を運んでみてください♪


【大寧寺 基本情報】

電話:0837-25-3469 

駐車場:80台(無料)

2022紅葉ライトアップ:11月1日~12月上旬の17:30~22:30

大寧寺の紅葉ライトアップ情報♪

Column

爽やか朝座禅体験で、身も心も浄化♪

長門湯本温泉宿泊者限定で、大寧寺ご住職直々の座禅を体験できます!

坐禅の説明(作法と心得)から始まり、坐禅体験(坐禅30分)と法話「大寧寺の歴史」まで、約1時間。

座禅によって心を整えることで心が安らぎ頭をリフレッシュできると、密かに人気。

心身ともに、隅々まで浄化できそうです♪

 

開催日:月曜~金曜

時間:7:00~8:00(約1時間)

参加人数:2名様より(3日前までの予約) 

料金:ご献香料1,000円 

予約:各宿泊施設または長門湯本温泉旅館協同組合事務局(TEL:0837-25-3611) 

 

爽やか朝座禅体験で、身も心も浄化♪

【周辺スポット】深紅に染まる『モミジ寺』へもぜひ!

せっかくここまで来たので、すぐ近くの絶景紅葉スポットをもうひとつご紹介します!

大寧寺から車で約10分の『西念寺』は、知る人ぞ知る穴場の紅葉スポット。

俵山温泉の西に位置する浄土真宗のお寺で、紅葉の時期になると山門から本堂までの石段が赤一色に染まる…その情報を聞きつけて、行ってきました!


取材は11月5日、当然、見頃はまだまだ!  

でも、石段を登りながら周りに目をやると、見渡す限りの、モミジ、モミジ、モミジ…!

それも、モミジとしてはかなり大きくて高い木ばかり!

一部は黄色や赤色に染まっており、ピーク時にはこれらが赤く染まったら、一体どんな絶景になっちゃうのかしらー!!

と一人で興奮しておりました(笑)。

こちらの見頃も例年では11月中旬から12月中旬ごろまで。

駐車場は5、6台停められるスペースがありました。

目印はバス停です。(写真2枚目)

ぜひ足を延ばしてみてください♪

穴場だけに、静かな紅葉狩りが期待できるかと思われます!  

悠久の時の流れを感じる紅葉狩りは、心も豊かに染まるひととき

境内の回りを見上げて見渡せば、深緑の山々に、様々な雑木の紅葉がちらほらと。

大寧寺も、西念寺も、川がすぐ横に流れていて、常に聞こえてくるせせらぎ…。

長い時を経て変わらない景色を、今見ているんだなぁ…

悠久の時の流れの中で、とても豊かな気持ちになりました。

自然豊かな山の中の古刹ならではの、紅葉狩りではないでしょうか  

そして、お寺と温泉のつながりなど訪れた土地の歴史を知ると、見える景色も変わってくるものですね!


さぁ、ピーク時が楽しみです!


今回ご紹介した場所を地図で分かりやすく表示しましたので、チェックしてみてください♪

  • 大寧寺
  • 西念寺
  • 長門湯本温泉
  • 住吉神社・興阿寺

この記事を書いた人

サキエ

神奈川県で生まれ育つ。20代で海外一人旅にはまり、30代で三重県熊野地方に移住。熊野古道ガイドをしながら地域密着型セレクトショップ「木花堂」を開業。休日は海に潜るか山に登るかのどちらかでした。結婚後、夫の故郷山口県へ引っ越し、40代は育児を楽しみながら、自営業でお弁当作りと草編み作家活動をしています。人生を豊かにする旅やおでかけのきっかけとなるような記事を、子どもたちと一緒に大好きな山口県から発信します!

サキエ